重心こそ、身体改善の極意
- 2015/11/01
- 08:00
「古久澤先生のメルマガには、『根本から体質を改善するには、重心を正すことが大事』と書かれています。
でも、そもそも正しい重心の位置ってどこなんでしょう?
重心とは何ぞや?」
「重心の正しい位置は、内踝だよね。
より正確に言うと、足裏に内踝から引いた横ラインと、人差し指から降ろして来た縦ラインが交わる一点」

「そのとおり。
この一点で立った時が一番楽で、それでいて最大の力が発揮できる。
そして股関節も内踝の真上に来ているから、『股関節の捉え』が出来た状態になっている」
「スポーツでは『親指重心』が大事だって言う人が多いけど、親指の上には何もないもんね。
本当に親指重心で動いていたら、膝か足首を壊しちゃうよ」
「実績ある選手や指導者でも、親指重心を主張する人は多い。
おそらく本人の身体感覚としては、それで正しいからであろう」
「でも本人の主観と、客観的事実とは、ズレがあることが多いもんね。
言い換えれば、それほど重心の位置は実感しづらいってことかも?」
「かえって片足で立つと、重心の位置がハッキリする。
ヨガの『立木のポーズ』などをやった時に、内踝と人差し指ラインが交わる一点に体重が乗った時は、ピタッ!と姿勢が安定する。

しかし、ちょっとでもその位置からずれると、途端にグラグラする。
チンパンもいま、毎日2分ずつ片足立ちをやっているが、意外にきつい。
でもやった後は二本足で立っても、重心が自覚しやすい。
王監督の一本足打法も、重心との関係がものすごく深かったんだろうな と推測する次第」
「大道芸人が、掌に長い棒を乗せて芸をやるのも、重心を一点に乗せているからだよね。
知った情報を、自分のボディですぐに検証できるのが、身体の勉強のいい点。
受け売りの知識じゃ、応用が利かないからつまらないもんね」
「大抵の人は片足立ちをやった時に、左右でやりやすさが違う筈。
それが重心の偏り、左右差。
実は二本足で立っている時も、大なり小なり重心に偏りがあるのが現実」
「重心の偏りが大きいほど、病氣になりやすいんだよね。
ほとんどの人は足の長さに左右差があって、短い足側に重心がかかりやすいし。
左足が長い人は右足重心になって、消化器や泌尿器系、婦人科系の病氣になりやすい傾向がある」
「右足が長い人は左足重心になって、呼吸器系や循環器系の病氣になりやすい。
もちろん、あくまで傾向なので、必ずそうなるとは限らない。
重心の偏りも、弱った側・疲れた側をかばうたびに、左右の足に行ったり来たりする。
その往復回数が多いほど、身体の内部の歪みも進行していく」
「重心の左右差を修正するためには、肩幅の広さで立って、短い側の足を半歩前に出して屈伸すると、修正になるんだよね。
そして風邪は天然の整体。
風邪が治った後に、左右の足それぞれを体重計に乗せると、五分五分の体重になっていることが多いんだよね」
「足裏の一点に重心を乗せられれば、動きの質も向上する。
開脚から股関節トンネル体操=片足を床の上で時計の半円状に回転させ、内転筋の意識を向上させる体操 をやった後、



片足の踵を、肛門近くに引き寄せて片膝立ちになる。

内踝ラインと人差し指ラインが交わる一点に乗り込むと、お尻が浮く。

そのまま足裏で優しく床を押すと、床からの反発力で自然に起き上がれる」。


こういう身体の使い方が出来るようになると、日常生活の動きがとても楽になるし、スポーツなどのパフォーマンスが向上する。
老いても足腰が衰えにくい」
「起き上がれなくても、やろうとするだけで身体感覚は開発されていくもんね」
「反対に、起き上がれる人もそれでOKとは限らない。
起き上がってくる過程で、正しい位置から重心がずれて、筋力に頼っている場合もあるため。
正しい重心の一点から、どれだけずれているかを感じ取り、修正して行くことが稽古」
「稽古とは、闇雲に身体を動かすことじゃなくて、『感じること』だもんね」
「この起き上がり自体も左右でやりやすさが違う。
それも身体の<歪み>なので、修正して左右『平らけく』の身体を目指そう」
古久澤先生のメルマガとブログには、身体の極意が満載。
「呼吸で人生をストレッチする!」
「夢をかなえる心のストレッチ」
ブログ「青い空と碧い海」
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のメルマガとブログはこちらです。
メルマガ「小顔なんて簡単!」
ブログ「ふぐじろうのブリージングストレッチ日記」
「重心は身体だけじゃなくて、心とも関係が深いんだよね。
『重身』じゃなくて、『重心』って書くのは意味深。
重心が上がると、氣も上がっちゃう。重心が定まらなくなると、心も定まらなくなる。
反対に、重心が下がって定まると、心も安定しちゃう。
古久澤先生が20代の頃、NHKの番組の体操コーナーに出演された時、初体験なのに全然リラックスしているから、スタッフが驚いたんだよね。
ちょうどその頃、先生は毎日何千回も屈伸されていたから、平常心で臨めたとおっしゃっているよね」
「昔から、心を安定させるためには、足を使うことが推奨されている。
お百度参りなどもそう。百日間、毎日長い階段を上り下りしてお参りするから、自然に重心が下がって定まってくる。
氣も下がって、頭寒足熱の状態になるので、悩みも消えやすいし、願いもかないやすくなると言う寸法。
四股を踏むことも重心を下げて、安定させる効果がある。
もう亡くなったけれど、佐川幸義(さがわゆきよし)と言う、古武術=大東流合氣柔術の達人が居た。
木村さんという弟子が、『鍛え方を教えてください』と頼んだところ、『毎日四股を千回踏みなさい』と佐川先生は答えたという」
「千回!とてもそんなに出来ないんじゃない?」
「木村さんもそう訴えたところ、『何を言うか。私は四股を踏み続けたまま、死ぬことが出来る』と佐川先生に怒られたとのこと」
「そこまで言われちゃったら、もう反論できないよね(笑)」
「木村さんはその日から毎日四股を千回踏むようになった。
やがて足腰が出来てくると、道場の稽古でも先輩から容易に投げられなくなった。
精神的にも安定し、仕事でヨーロッパなどに出張したときに、路上で巨漢に絡まれても、動揺することなく笑顔で切り抜けられるようになったと言う。
相手がつかんで来ても、合氣の技を軽くかけると、もうビックリしてそれ以上手出しして来なかったとのこと」
「危険から身を守るには、小手先のテクニックよりも、日頃の鍛錬に裏打ちされた平常心ってことか」
「鍛錬を始める以前の木村さんは、そういうヤバイ場面に遭遇すると、殺氣立った心境になって対応していたという。
しかし、『毎日千回四股を踏んでいるヤツなんか、そうそう居ない』という自信が持てるようになると、そういう人格的変身をしなくても、普段の自分で対応できるようになったという」
「今までの話を総合すると、重心は下がっているに越したことはないの?」
「本当は下がりっぱなしもまずい。超静かで暗い人生になりかねない。
だからと言って重心が上がりっぱなしだと、いつも興奮状態で周りが大変。
重心の上下が自在な身体が良い身体」
「そのために屈伸する訳だもんね」
「ここぞ!と言う時に、わざと重心を上げる人もいる。
天皇陛下の心臓外科手術を見事成功させた、天野篤医師もその一人。
天野医師は、手術が山場に差し掛かると、つま先立ちになったまま執刀するという。
そうすると集中力が高まって、パフォーマンスが高まるとのこと」
「脳天にある百会(ひゃくえ)のツボを、天に向かって押し上げているからかもね。
天野先生は手術中に、何か『降りてくる』ことが多いみたいだし。
もう一人の自分が中に浮いていて、手術中の自分を見下ろしているとか言っているもんね」
「自在に自分を二重化させられるようになってから、手術の成功率は99.8%にまで高まったと言う。
手術の成功例も『たまたま上手く行った』ケースが減って行き、再現性を持って手術できるようになった。
全プロセスを構想どおりに行えるようになって行ったとのこと。
ブリージングでも重視している古典『易経』で言えば、
『至るを知ってこれに至る。ともに機を言うべきなり。
終わりを知ってこれを終う。ともに義を存すべきなり(乾為天)』
と言ったところ。
仕事の到達点を最初から見据えてそこに到達するのは、機=チャンスを見逃さないからだ。
終わるべきして終える=成功すべくして成功するのは、そこに義=天地に通じる道理が存在するからだ。
というような意味」
「やっぱり天野先生は、すごい領域にまで到達しているってことか」
「もちろん天野医師は、百会を天に上げているだけではなく、つま先立ちになった足元は、地をしっかり捉えている筈。
いわば自分の身体で天地合一を体現した状態で手術している。
だから手術後、夜中にふくらはぎが痙攣を起こすことも、しばしばあると言う」
「どんなすごい仕事も、根本で支えてくれるのは身体ってことだね」
「見過ごされやすいけど、重心と関係が深いのがアゴ。
アゴが上がると、重心も一緒に上がってしまう」
「ギブアップするのを、アゴが上がるって言うもんね。マラソンも相撲も、アゴが上がった人が負け。
ストレスでやられないためにも、アゴを引かなきゃね。
アゴを引けって言うと、うつむいちゃう人が多いけど、視線は真っ直ぐのままアゴを引くこと。
そうすると、自然に首も立っちゃうし」
「アゴを引いて、首を立てて、じっと相手を観る、話を聴いていると、だまされなくなるし、相手の本音も見抜きやすい。
つまり、相手の呼吸に巻き込まれにくくなる。
肉体的にもアゴは急所。ボクシングでもガードしてしっかりアゴを守る。
アゴを打たれると、脳が揺らされて身体が制御出来なくなるため」
「ボクサーでアゴが弱いのは、グラスジョー=ガラスのアゴって呼ばれて、致命的な弱点らしいよね」
「梶原一騎原作の『英雄失格』というシリーズにも、ずばり『グラスジョー』という話がある。
作画を担当していたのは、後年競馬マンガで有名になったやまさき拓味(ひろみ)。
シャーク南波という若手ボクサーは、バツグンの才能を持ちながら、アゴが致命的に弱いため、一発のラッキーパンチに泣くことが多かった。
苦悩の果てに、南波は独自の戦法を編み出した」
「その戦法とは?」
「右か左か忘れちゃったけど、片方のグローブでずっとアゴをつかみっ放しにして防御に徹する。
そして残った一本の手で戦うという奇天烈な戦法」
「それで勝てるの?」
「そこは南波は天才だから(笑)。批判を尻目にKO勝ちの山を築くと、ファンも専門家も掌を返してほめたたえるようになった。
ついに南波は世界タイトルに挑戦するが、チャンピオンは執拗に南波がアゴに当てた手の肘周辺を打ってきた。
ラウンドが進むごとに、手が痺れた南波はついにガードを下げてしまう。
その顎に狙い澄ましたチャンピオンのパンチが叩き込まれ、グラスジョーは砕け散ったのであった」
「・・・・・英雄失格って、ギャグ漫画だったの?」
「筋だけ話すと、ギャグにしか聴こえないかもしれないけど、作品は大真面目に『悲劇の熱血』『滅びの美学』をやっている。
当時(昭和50年代)は、梶原先生もスランプ期に入っていたからね。
英雄失格も怪作として、消えてしまった作品。チンパンは結構好きだったけど。
まあ、何が言いたいかといえば、それだけアゴは大事だということ(笑)。
アゴをコントロールすることは、重心と首の巧みな操作にも通じる。
『いつもより余計に回しております』の芸人、海老一染之助・染太郎の首の使い方や、重心操作は見事だった」
「口にくわえた棒の上に、コマとかを乗せて回していたもんね。よっぽど首を柔らかく使っていた証拠だよ。
傘にマリを乗せて回したりとかもしていたし。しかも片足立ちでやったりしてたもん。
ある意味達人だよ」
「動画はネットでも見れるので、身体の使い方の勉強になる」
(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。

写真はアゴを引いて首を立て、ふぐじろう先生がゴハンを投げてくれるのをじっと待つボクです。
重心も決まってますね~。
ここで問題です。世間では体重移動(シフトウエイト)と、重心移動をごっちゃにして使っていますが、正確に言うとこの二つは違うものです。
どこが違うと思いますか?
体重移動とは、横方向=水平方向だけの動きです。
そして重心移動とは、縦方向=垂直方向の運動。
実際には人間も動物も、体重移動と重心移動をミックスさせて運動しています。
特に二本足で立っている人間は、重心移動が重要な要素になります。
ここから先の話は専門的すぎるので省略しますが、マメ知識として頭に入れて置くと、いつか役に立つ日が来るかも知れません。
身体の勉強は、まだまだ果てしが無いのです。
つづく
でも、そもそも正しい重心の位置ってどこなんでしょう?
重心とは何ぞや?」
「重心の正しい位置は、内踝だよね。
より正確に言うと、足裏に内踝から引いた横ラインと、人差し指から降ろして来た縦ラインが交わる一点」

「そのとおり。
この一点で立った時が一番楽で、それでいて最大の力が発揮できる。
そして股関節も内踝の真上に来ているから、『股関節の捉え』が出来た状態になっている」
「スポーツでは『親指重心』が大事だって言う人が多いけど、親指の上には何もないもんね。
本当に親指重心で動いていたら、膝か足首を壊しちゃうよ」
「実績ある選手や指導者でも、親指重心を主張する人は多い。
おそらく本人の身体感覚としては、それで正しいからであろう」
「でも本人の主観と、客観的事実とは、ズレがあることが多いもんね。
言い換えれば、それほど重心の位置は実感しづらいってことかも?」
「かえって片足で立つと、重心の位置がハッキリする。
ヨガの『立木のポーズ』などをやった時に、内踝と人差し指ラインが交わる一点に体重が乗った時は、ピタッ!と姿勢が安定する。

しかし、ちょっとでもその位置からずれると、途端にグラグラする。
チンパンもいま、毎日2分ずつ片足立ちをやっているが、意外にきつい。
でもやった後は二本足で立っても、重心が自覚しやすい。
王監督の一本足打法も、重心との関係がものすごく深かったんだろうな と推測する次第」
「大道芸人が、掌に長い棒を乗せて芸をやるのも、重心を一点に乗せているからだよね。
知った情報を、自分のボディですぐに検証できるのが、身体の勉強のいい点。
受け売りの知識じゃ、応用が利かないからつまらないもんね」
「大抵の人は片足立ちをやった時に、左右でやりやすさが違う筈。
それが重心の偏り、左右差。
実は二本足で立っている時も、大なり小なり重心に偏りがあるのが現実」
「重心の偏りが大きいほど、病氣になりやすいんだよね。
ほとんどの人は足の長さに左右差があって、短い足側に重心がかかりやすいし。
左足が長い人は右足重心になって、消化器や泌尿器系、婦人科系の病氣になりやすい傾向がある」
「右足が長い人は左足重心になって、呼吸器系や循環器系の病氣になりやすい。
もちろん、あくまで傾向なので、必ずそうなるとは限らない。
重心の偏りも、弱った側・疲れた側をかばうたびに、左右の足に行ったり来たりする。
その往復回数が多いほど、身体の内部の歪みも進行していく」
「重心の左右差を修正するためには、肩幅の広さで立って、短い側の足を半歩前に出して屈伸すると、修正になるんだよね。
そして風邪は天然の整体。
風邪が治った後に、左右の足それぞれを体重計に乗せると、五分五分の体重になっていることが多いんだよね」
「足裏の一点に重心を乗せられれば、動きの質も向上する。
開脚から股関節トンネル体操=片足を床の上で時計の半円状に回転させ、内転筋の意識を向上させる体操 をやった後、



片足の踵を、肛門近くに引き寄せて片膝立ちになる。

内踝ラインと人差し指ラインが交わる一点に乗り込むと、お尻が浮く。

そのまま足裏で優しく床を押すと、床からの反発力で自然に起き上がれる」。


こういう身体の使い方が出来るようになると、日常生活の動きがとても楽になるし、スポーツなどのパフォーマンスが向上する。
老いても足腰が衰えにくい」
「起き上がれなくても、やろうとするだけで身体感覚は開発されていくもんね」
「反対に、起き上がれる人もそれでOKとは限らない。
起き上がってくる過程で、正しい位置から重心がずれて、筋力に頼っている場合もあるため。
正しい重心の一点から、どれだけずれているかを感じ取り、修正して行くことが稽古」
「稽古とは、闇雲に身体を動かすことじゃなくて、『感じること』だもんね」
「この起き上がり自体も左右でやりやすさが違う。
それも身体の<歪み>なので、修正して左右『平らけく』の身体を目指そう」
古久澤先生のメルマガとブログには、身体の極意が満載。
「呼吸で人生をストレッチする!」
「夢をかなえる心のストレッチ」
ブログ「青い空と碧い海」
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のメルマガとブログはこちらです。
メルマガ「小顔なんて簡単!」
ブログ「ふぐじろうのブリージングストレッチ日記」
「重心は身体だけじゃなくて、心とも関係が深いんだよね。
『重身』じゃなくて、『重心』って書くのは意味深。
重心が上がると、氣も上がっちゃう。重心が定まらなくなると、心も定まらなくなる。
反対に、重心が下がって定まると、心も安定しちゃう。
古久澤先生が20代の頃、NHKの番組の体操コーナーに出演された時、初体験なのに全然リラックスしているから、スタッフが驚いたんだよね。
ちょうどその頃、先生は毎日何千回も屈伸されていたから、平常心で臨めたとおっしゃっているよね」
「昔から、心を安定させるためには、足を使うことが推奨されている。
お百度参りなどもそう。百日間、毎日長い階段を上り下りしてお参りするから、自然に重心が下がって定まってくる。
氣も下がって、頭寒足熱の状態になるので、悩みも消えやすいし、願いもかないやすくなると言う寸法。
四股を踏むことも重心を下げて、安定させる効果がある。
もう亡くなったけれど、佐川幸義(さがわゆきよし)と言う、古武術=大東流合氣柔術の達人が居た。
木村さんという弟子が、『鍛え方を教えてください』と頼んだところ、『毎日四股を千回踏みなさい』と佐川先生は答えたという」
「千回!とてもそんなに出来ないんじゃない?」
「木村さんもそう訴えたところ、『何を言うか。私は四股を踏み続けたまま、死ぬことが出来る』と佐川先生に怒られたとのこと」
「そこまで言われちゃったら、もう反論できないよね(笑)」
「木村さんはその日から毎日四股を千回踏むようになった。
やがて足腰が出来てくると、道場の稽古でも先輩から容易に投げられなくなった。
精神的にも安定し、仕事でヨーロッパなどに出張したときに、路上で巨漢に絡まれても、動揺することなく笑顔で切り抜けられるようになったと言う。
相手がつかんで来ても、合氣の技を軽くかけると、もうビックリしてそれ以上手出しして来なかったとのこと」
「危険から身を守るには、小手先のテクニックよりも、日頃の鍛錬に裏打ちされた平常心ってことか」
「鍛錬を始める以前の木村さんは、そういうヤバイ場面に遭遇すると、殺氣立った心境になって対応していたという。
しかし、『毎日千回四股を踏んでいるヤツなんか、そうそう居ない』という自信が持てるようになると、そういう人格的変身をしなくても、普段の自分で対応できるようになったという」
「今までの話を総合すると、重心は下がっているに越したことはないの?」
「本当は下がりっぱなしもまずい。超静かで暗い人生になりかねない。
だからと言って重心が上がりっぱなしだと、いつも興奮状態で周りが大変。
重心の上下が自在な身体が良い身体」
「そのために屈伸する訳だもんね」
「ここぞ!と言う時に、わざと重心を上げる人もいる。
天皇陛下の心臓外科手術を見事成功させた、天野篤医師もその一人。
天野医師は、手術が山場に差し掛かると、つま先立ちになったまま執刀するという。
そうすると集中力が高まって、パフォーマンスが高まるとのこと」
「脳天にある百会(ひゃくえ)のツボを、天に向かって押し上げているからかもね。
天野先生は手術中に、何か『降りてくる』ことが多いみたいだし。
もう一人の自分が中に浮いていて、手術中の自分を見下ろしているとか言っているもんね」
「自在に自分を二重化させられるようになってから、手術の成功率は99.8%にまで高まったと言う。
手術の成功例も『たまたま上手く行った』ケースが減って行き、再現性を持って手術できるようになった。
全プロセスを構想どおりに行えるようになって行ったとのこと。
ブリージングでも重視している古典『易経』で言えば、
『至るを知ってこれに至る。ともに機を言うべきなり。
終わりを知ってこれを終う。ともに義を存すべきなり(乾為天)』
と言ったところ。
仕事の到達点を最初から見据えてそこに到達するのは、機=チャンスを見逃さないからだ。
終わるべきして終える=成功すべくして成功するのは、そこに義=天地に通じる道理が存在するからだ。
というような意味」
「やっぱり天野先生は、すごい領域にまで到達しているってことか」
「もちろん天野医師は、百会を天に上げているだけではなく、つま先立ちになった足元は、地をしっかり捉えている筈。
いわば自分の身体で天地合一を体現した状態で手術している。
だから手術後、夜中にふくらはぎが痙攣を起こすことも、しばしばあると言う」
「どんなすごい仕事も、根本で支えてくれるのは身体ってことだね」
「見過ごされやすいけど、重心と関係が深いのがアゴ。
アゴが上がると、重心も一緒に上がってしまう」
「ギブアップするのを、アゴが上がるって言うもんね。マラソンも相撲も、アゴが上がった人が負け。
ストレスでやられないためにも、アゴを引かなきゃね。
アゴを引けって言うと、うつむいちゃう人が多いけど、視線は真っ直ぐのままアゴを引くこと。
そうすると、自然に首も立っちゃうし」
「アゴを引いて、首を立てて、じっと相手を観る、話を聴いていると、だまされなくなるし、相手の本音も見抜きやすい。
つまり、相手の呼吸に巻き込まれにくくなる。
肉体的にもアゴは急所。ボクシングでもガードしてしっかりアゴを守る。
アゴを打たれると、脳が揺らされて身体が制御出来なくなるため」
「ボクサーでアゴが弱いのは、グラスジョー=ガラスのアゴって呼ばれて、致命的な弱点らしいよね」
「梶原一騎原作の『英雄失格』というシリーズにも、ずばり『グラスジョー』という話がある。
作画を担当していたのは、後年競馬マンガで有名になったやまさき拓味(ひろみ)。
シャーク南波という若手ボクサーは、バツグンの才能を持ちながら、アゴが致命的に弱いため、一発のラッキーパンチに泣くことが多かった。
苦悩の果てに、南波は独自の戦法を編み出した」
「その戦法とは?」
「右か左か忘れちゃったけど、片方のグローブでずっとアゴをつかみっ放しにして防御に徹する。
そして残った一本の手で戦うという奇天烈な戦法」
「それで勝てるの?」
「そこは南波は天才だから(笑)。批判を尻目にKO勝ちの山を築くと、ファンも専門家も掌を返してほめたたえるようになった。
ついに南波は世界タイトルに挑戦するが、チャンピオンは執拗に南波がアゴに当てた手の肘周辺を打ってきた。
ラウンドが進むごとに、手が痺れた南波はついにガードを下げてしまう。
その顎に狙い澄ましたチャンピオンのパンチが叩き込まれ、グラスジョーは砕け散ったのであった」
「・・・・・英雄失格って、ギャグ漫画だったの?」
「筋だけ話すと、ギャグにしか聴こえないかもしれないけど、作品は大真面目に『悲劇の熱血』『滅びの美学』をやっている。
当時(昭和50年代)は、梶原先生もスランプ期に入っていたからね。
英雄失格も怪作として、消えてしまった作品。チンパンは結構好きだったけど。
まあ、何が言いたいかといえば、それだけアゴは大事だということ(笑)。
アゴをコントロールすることは、重心と首の巧みな操作にも通じる。
『いつもより余計に回しております』の芸人、海老一染之助・染太郎の首の使い方や、重心操作は見事だった」
「口にくわえた棒の上に、コマとかを乗せて回していたもんね。よっぽど首を柔らかく使っていた証拠だよ。
傘にマリを乗せて回したりとかもしていたし。しかも片足立ちでやったりしてたもん。
ある意味達人だよ」
「動画はネットでも見れるので、身体の使い方の勉強になる」
(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。

写真はアゴを引いて首を立て、ふぐじろう先生がゴハンを投げてくれるのをじっと待つボクです。
重心も決まってますね~。
ここで問題です。世間では体重移動(シフトウエイト)と、重心移動をごっちゃにして使っていますが、正確に言うとこの二つは違うものです。
どこが違うと思いますか?
体重移動とは、横方向=水平方向だけの動きです。
そして重心移動とは、縦方向=垂直方向の運動。
実際には人間も動物も、体重移動と重心移動をミックスさせて運動しています。
特に二本足で立っている人間は、重心移動が重要な要素になります。
ここから先の話は専門的すぎるので省略しますが、マメ知識として頭に入れて置くと、いつか役に立つ日が来るかも知れません。
身体の勉強は、まだまだ果てしが無いのです。
つづく
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