正しい立ち方を学べば、心身が健康になる
- 2015/05/31
- 08:00
「1年前から居酒屋で働いています。
接客は性に合っているようですが、いつまで経っても立ち仕事に慣れません。
すぐ足裏、膝、腰が痛くなります。
上手に立つコツがあったら教えてください。
それでもボクは立ち続ける」
「長時間立っているのがきついのは、骨盤が歪んでいる可能性が高いよね」
「そのとおり。
古久澤先生の著書『しあわせを引き寄せるカラダ』の16~21Pに、簡単な骨盤の歪み判定法が出ている」
「その場で目をつぶって、50回くらい思い切り足踏みをすることだよね。
目を開けたときに、最初の位置からずれている人ほど、骨盤の歪みが大きいってわけ」
古久澤先生のメルマガとブログに学べば、あなたも骨盤博士になれる。
「呼吸で人生をストレッチする!」
「夢をかなえる心のストレッチ」
ブログ「青い空と碧い海」
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のメルマガとブログはこちらです。
メルマガ「小顔なんて簡単!」
ブログ「ふぐじろうのブリージングストレッチ日記」
「骨盤の前後、左右、捻じれの3種類ある。その見分け方と修正法については、『しあわせを引き寄せるカラダ』に書かれている。
このブログでもたびたび紹介しているので、今回はカット。
骨盤の歪みを取るだけでも、相談者さんの悩みはある程度解決できる筈=身体のクリーニング。
次に、『正しい立ち方』を学ぶ段階に進む=身体のトレーニング」
「改めて、『正しい立ち方とは?』って考えると、難しいよね」
「ひとつの判断基準は『その姿勢で、ずっと楽に立ち続けられるか?』と言うこと」
「氣功や中国拳法の立禅(りつぜん)は、まさしく自分にとってのベストの立ち方を探る稽古だよね」
「そのために両手で地面と平行に円を描いて、何十分もたち続ける。
重心の狂いや無駄な力みがあると、身体がきつくて仕方がない」

「重力と一体化・調和するほど氣持ちよく立てちゃう。
何十年も立ち続ける、樹木のようになるのが理想だよね。立禅は人が木になる稽古」
「大河演劇マンガ、『ガラスの仮面』にも立禅が出て来るシーンがある」
「え~っ、どこどこ?」
「演劇の天才少女・北島マヤは、ライバル姫川亜弓と、幻の名作『紅天女(くれないてんにょ)』の主演を目指して競い合っている」
「紅天女って、人間じゃなくて梅の木の精霊だもんね。
人ならぬ存在を演じるには、千もの役をこなせる技量と経験が必要」
「マヤの師匠・月影千草先生は、梅の木の下に、マヤと亜弓を連れて行く。
そして、『この梅の木になりなさい』と命じた」
「いつも月影先生は、何の前振りも説明も無しに、いきなり突拍子もない稽古をやらせるんだよね(笑)。
まるで武道の稽古みたい」
「ライバル亜弓は右足に重心を乗せ、手を上げて見栄えのするポーズを取る=梅の木に見立てたポーズ。
いっぽうマヤは、両手をダランと下げて、その場に立っているだけ」
「マヤのポーズは、地味でアピールに乏しいんじゃない?」
「しかし、月影先生は、いつまで経ってもやめるように言わない。
重心が不均衡な亜弓の右の足腰が痛くなってきた。上げっぱなしの手も重たい。
いっぽうマヤの姿勢は無理がない。完全に重力と調和しており、時間と共に梅の木らしさをかもし出して来るのだった」
「さすが、本能で演技するマヤだね。
確かにマヤの立ち方は立禅そのものかも?
立禅にも手をダラッと垂らしたり、色んなやり方があるもんね」
「稽古後の二人への批評は、亜弓のフォームは確かにキレイだが、無理がある。
だから時間と共に重力の影響を受けて、人としての脆さを表してくる。
反対にマヤの立ち方は、時間と共に梅の木らしくなってくるので、稽古の本質をつかんでいる」
「立ち姿も、『時間』というフィルターを通して観ると、評価が変わっていくということか」
「『目的』という観点からも違ってくる。
現実の舞台では、そんなに長時間木を演じることはないので、『見せる演技』という面では、亜弓に軍配が上がるとのことであった。
体操も同じ。人にキレイに見せるための体操と、自分の身体と深く向き合う体操は、そのあり方が違ってくる」
「ブリージングが目指しているのは、もちろん後者の体操だよね」
「そのとおり。
しかし今回のテーマは『立つ』ことなので、その話はまた別の機会に」
「具体的に正しい立ち方って、どういう姿勢なの?」
「内踝(うちくるぶし)の真上に股関節が来ている姿勢が、足腰に負担をかけずに、楽に立てる姿勢。
左右の足の重心は、もちろん均等。
下半身が安定するので、上半身も脳も、安心してリラックスできる。
内踝と股関節の真上に、耳があると更に良い」
「いわゆる『股関節の捉え(とらえ)』が出来た状態だよね。
たいていの人は、腰が後ろに引けているから、股関節の位置も、内踝より後ろに行っちゃうんだよね。
オーバーに言うと、へっぴり腰」
「股関節の位置を修正する方法はたくさんある。
股関節が後ろに引けた状態は、重心も上がっているので、自分より体格が大きい人間には、簡単に持ち上げられてしまう。

受け手とパートナーは、お互いに最初の感覚を確認しておく。
次に受け手は一人で前屈。その時の曲がり具合も確認。

パートナーが鉄槌で背骨の両脇を、上から下に向かって叩く。まず肩甲骨の間。
背中の詰まりを抜いていくのが目的。

力加減は受け手の様子を見て調節。
受け手は叩かれながら『あ~』と声を出し続ける」
「『あ~』って音は、全方向に力が広がっていく音だもんね。
これが『う~』だと、力が内にこもっていくから、背中の詰まりが取れないもんね。
声を出すのに抵抗がある人は、無言で息を吐き続ければOK」
「受け手は『あ~』と言いながら少しずつ前屈して行く。
パートナーはそれにつれて、背中の下の部分も叩いていく。

特にお尻の仙腸関節(せんちょうかんせつ)=仙骨と腸骨の間は、念入りに叩く。


受け手は下まで下がりきったら、首の力も抜いて、股関節からダラ~ンと上体をぶら下げる」

「普段より、楽に深く前屈出来るようになるよね。背中の縮みが取れたからだよね」
「受け手は、膝を曲げて少しずつ上半身を持ち上げて行く。
パートナーはその間も背中を叩き続ける。
最後に受け手は首をスッと伸ばして立位になる。
いつもより視点が高くなった感覚がある筈。
再びパートナーが両脇に手を入れて持ち上げようとする。
今度は持ち上がらない。あるいは格段に持ち上げにくくなる」

「え~っ、背中を叩いてほぐしただけなのに、なぜ立つ力まで強くなるの?」
「背中が柔らかくなって伸びた分、腰が後ろに引っ張られなくなったから。
当然、股関節も普段より前にある。
前屈が深く出来るようになったと言うことは、それだけ股関節に乗り込んでいると言うことでもある。
つまり股関節の捉えが良くなって、重心も下がったということ」
「納得。
でも、パートナーが居る時はいいけど、一人でやる時はど~すればいいの?」
「一つにはイメージング。パートナーが叩いてくれていると仮想して前屈する。
自分の手の届く範囲で、背中を叩きながら前屈するのも可。
あるいは背骨ローリングで背中をほぐす。
仰向けに寝て両手で膝裏を抱え、後方にでんぐり返りする。

脚が伸びきって床についた姿勢は、ヨガの『鋤(すき)のポーズ』と似ている。

脚を戻していく反動を使って、体操座りになる。

また後方に向かって倒れる動作を繰り返す」
「確かに床に指圧されて、背中が緩んでいくよね」
「教室では3回くらいしかやらないけど、自宅でやるときは何回やってもいい。
目が回るのは普段から重心が上がっている証拠」
「目をつぶってやってもいいよね。
だんだん位置がずれたとしたら、背骨が歪んでいるせい」
「そのとおり。
以前、チンパンも100回やったら、お尻の皮が向けた(笑)。
まだまだ余分な力が入っていると言うこと。
話を戻すと、基本=前屈と背骨ローリングだけで、結構股関節で捉えた状態が創れると言うこと」
「それだけ基本は大事ってことでもあるよね」
「股関節の捉えが出来た状態だと、足腰や膝に負担がかからず、長時間楽に立ち続けられる。
立禅も股関節を正しい位置に修正してからやると、重力との調和をつかみやすい。つまり上達が早い。
正しい重心でゆったりと立てるようになれば、心も穏やかになる。仏像はみんな姿勢がいい。
立禅や立ち方を稽古で得られる最大のメリットは、『心の平安』かも知れない」
「なるほど~。人が求めるのは、心の安定だもんね。
これで立ち方の問題は全て解決?」
「ところが人間は樹木のように静止して生きているのではなく、歩き回って生活している。
静止の状態なら正しい重心・姿勢で立てるようになっても、動いた瞬間に壊れてしまう。
先ほどの背中を叩いて前屈する組手で、股関節の位置を修正すると、確かに持ち上げにくくなる。
しかし、いつもの調子で歩き回って貰ってから、パートナーに持ち上げてもらうと、今度はあっさり持ち上げられてしまう」
「動くことで、股関節の位置がずれて、感覚が消えたからだね。
偽りのお化粧のようなもの?」
「テクニックだけで一瞬でつくった状態は、崩れるのも一瞬ということ。
ただし稽古がお化粧と違う点は、瞬間の変化を羅針盤として、脳の回路を変えて行く点。
回路を定着させるために、立禅や屈伸を長時間繰り返す。
実際に屈伸をやり込んでいる時は、歩くのも足が軽くて楽。
そして、並行して『正しい歩き方』を稽古して行くのが肝心」
「武道とか能などの古典芸能でも、『歩く姿を技にしなさい』って教えるみたいだもんね」
「静止した状態でだけ、<股関節の捉え>が出来ても、スポーツや仕事などの専門的な動きの中で役立てるには限界があると言うこと。
古典的なメソッドの中には、この解決法があるらしい。
たとえば中国拳法には、這(はい)という稽古法がある。
腰を落とした状態で、ゆっくりと左右に蛇行しながら歩く。
5メートルの距離を20分かけて動くほど、スローな動き」
「まるで立禅のまま動いているみたいだね」
「そういうこと。先生によっては、立禅よりも這を重視している人も居るほど。
実際の戦いでどれほど激しく動いても、這をやり込んでいれば、形状記憶合金のように、立禅の腰を落とした状態=股関節で捉えた状態 に戻れると言う。
昔の中国の達人は、田んぼの泥の中に足首までつかって這をやった人もいたらしい。
ただ強靭なだけでなく、左右に自在に動き回れる、しなやかで粘っこい足さばきを得るため。
動くということは、不安定になるのが普通。
その『不安定さの中で安定する』という矛盾を実現するためのひとつの回答が、這のユックリズムかも知れない」
「太極拳がスローに動くのも、そのためかもね?
ヨガにも、すごくゆっくり歩きながらやる瞑想法があるみたいだし」
「歩き方はとても高度で難しい話なので、チンパンもこれ以上よく分かりません。
最後に一つだけ言うと、立つのがきつい人は、腎臓が弱い可能性もある」
「腎は立つ力を司る臓器だもんね。
相談者さんが、腎が弱いんなら、養生する必要があるよね。
ワイパー体操みたいな、捻じる体操をいっぱいやるとか、半身浴で温めるとか、黒い食べ物を多めに摂るとか・・・・」
「腎は水の循環も統括している。
だから腎が弱い人が水商売をやると、立ち仕事と水っ氣のダブルパンチのダメージを受ける。
仕事を変えるのも手」
「職業選択も、自分の体質を参考にする必要があるよね。
相談者さんは接客好きだそうだけど、座ってやる接客業だってあるわけだし」
(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。

この写真は何をしているボクでしょう?
①二本足で立つ稽古をしている。
②骨盤と肋骨を引き離す組手をやっている。
③悪さをしたのでお仕置きされている=宙吊りの刑。
考えている間にコメントさせていただきますと、人間は直立歩行のため、重力の影響で色んな病氣を抱えることになりました。『正しく立つ』研究は、健康法に必須ですね。
ところで、みなさんのご明察のとおり、正解は③です。助けて~っ!
つづく
接客は性に合っているようですが、いつまで経っても立ち仕事に慣れません。
すぐ足裏、膝、腰が痛くなります。
上手に立つコツがあったら教えてください。
それでもボクは立ち続ける」
「長時間立っているのがきついのは、骨盤が歪んでいる可能性が高いよね」
「そのとおり。
古久澤先生の著書『しあわせを引き寄せるカラダ』の16~21Pに、簡単な骨盤の歪み判定法が出ている」
「その場で目をつぶって、50回くらい思い切り足踏みをすることだよね。
目を開けたときに、最初の位置からずれている人ほど、骨盤の歪みが大きいってわけ」
古久澤先生のメルマガとブログに学べば、あなたも骨盤博士になれる。
「呼吸で人生をストレッチする!」
「夢をかなえる心のストレッチ」
ブログ「青い空と碧い海」
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のメルマガとブログはこちらです。
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「骨盤の前後、左右、捻じれの3種類ある。その見分け方と修正法については、『しあわせを引き寄せるカラダ』に書かれている。
このブログでもたびたび紹介しているので、今回はカット。
骨盤の歪みを取るだけでも、相談者さんの悩みはある程度解決できる筈=身体のクリーニング。
次に、『正しい立ち方』を学ぶ段階に進む=身体のトレーニング」
「改めて、『正しい立ち方とは?』って考えると、難しいよね」
「ひとつの判断基準は『その姿勢で、ずっと楽に立ち続けられるか?』と言うこと」
「氣功や中国拳法の立禅(りつぜん)は、まさしく自分にとってのベストの立ち方を探る稽古だよね」
「そのために両手で地面と平行に円を描いて、何十分もたち続ける。
重心の狂いや無駄な力みがあると、身体がきつくて仕方がない」

「重力と一体化・調和するほど氣持ちよく立てちゃう。
何十年も立ち続ける、樹木のようになるのが理想だよね。立禅は人が木になる稽古」
「大河演劇マンガ、『ガラスの仮面』にも立禅が出て来るシーンがある」
「え~っ、どこどこ?」
「演劇の天才少女・北島マヤは、ライバル姫川亜弓と、幻の名作『紅天女(くれないてんにょ)』の主演を目指して競い合っている」
「紅天女って、人間じゃなくて梅の木の精霊だもんね。
人ならぬ存在を演じるには、千もの役をこなせる技量と経験が必要」
「マヤの師匠・月影千草先生は、梅の木の下に、マヤと亜弓を連れて行く。
そして、『この梅の木になりなさい』と命じた」
「いつも月影先生は、何の前振りも説明も無しに、いきなり突拍子もない稽古をやらせるんだよね(笑)。
まるで武道の稽古みたい」
「ライバル亜弓は右足に重心を乗せ、手を上げて見栄えのするポーズを取る=梅の木に見立てたポーズ。
いっぽうマヤは、両手をダランと下げて、その場に立っているだけ」
「マヤのポーズは、地味でアピールに乏しいんじゃない?」
「しかし、月影先生は、いつまで経ってもやめるように言わない。
重心が不均衡な亜弓の右の足腰が痛くなってきた。上げっぱなしの手も重たい。
いっぽうマヤの姿勢は無理がない。完全に重力と調和しており、時間と共に梅の木らしさをかもし出して来るのだった」
「さすが、本能で演技するマヤだね。
確かにマヤの立ち方は立禅そのものかも?
立禅にも手をダラッと垂らしたり、色んなやり方があるもんね」
「稽古後の二人への批評は、亜弓のフォームは確かにキレイだが、無理がある。
だから時間と共に重力の影響を受けて、人としての脆さを表してくる。
反対にマヤの立ち方は、時間と共に梅の木らしくなってくるので、稽古の本質をつかんでいる」
「立ち姿も、『時間』というフィルターを通して観ると、評価が変わっていくということか」
「『目的』という観点からも違ってくる。
現実の舞台では、そんなに長時間木を演じることはないので、『見せる演技』という面では、亜弓に軍配が上がるとのことであった。
体操も同じ。人にキレイに見せるための体操と、自分の身体と深く向き合う体操は、そのあり方が違ってくる」
「ブリージングが目指しているのは、もちろん後者の体操だよね」
「そのとおり。
しかし今回のテーマは『立つ』ことなので、その話はまた別の機会に」
「具体的に正しい立ち方って、どういう姿勢なの?」
「内踝(うちくるぶし)の真上に股関節が来ている姿勢が、足腰に負担をかけずに、楽に立てる姿勢。
左右の足の重心は、もちろん均等。
下半身が安定するので、上半身も脳も、安心してリラックスできる。
内踝と股関節の真上に、耳があると更に良い」
「いわゆる『股関節の捉え(とらえ)』が出来た状態だよね。
たいていの人は、腰が後ろに引けているから、股関節の位置も、内踝より後ろに行っちゃうんだよね。
オーバーに言うと、へっぴり腰」
「股関節の位置を修正する方法はたくさんある。
股関節が後ろに引けた状態は、重心も上がっているので、自分より体格が大きい人間には、簡単に持ち上げられてしまう。

受け手とパートナーは、お互いに最初の感覚を確認しておく。
次に受け手は一人で前屈。その時の曲がり具合も確認。

パートナーが鉄槌で背骨の両脇を、上から下に向かって叩く。まず肩甲骨の間。
背中の詰まりを抜いていくのが目的。

力加減は受け手の様子を見て調節。
受け手は叩かれながら『あ~』と声を出し続ける」
「『あ~』って音は、全方向に力が広がっていく音だもんね。
これが『う~』だと、力が内にこもっていくから、背中の詰まりが取れないもんね。
声を出すのに抵抗がある人は、無言で息を吐き続ければOK」
「受け手は『あ~』と言いながら少しずつ前屈して行く。
パートナーはそれにつれて、背中の下の部分も叩いていく。

特にお尻の仙腸関節(せんちょうかんせつ)=仙骨と腸骨の間は、念入りに叩く。


受け手は下まで下がりきったら、首の力も抜いて、股関節からダラ~ンと上体をぶら下げる」

「普段より、楽に深く前屈出来るようになるよね。背中の縮みが取れたからだよね」
「受け手は、膝を曲げて少しずつ上半身を持ち上げて行く。
パートナーはその間も背中を叩き続ける。
最後に受け手は首をスッと伸ばして立位になる。
いつもより視点が高くなった感覚がある筈。
再びパートナーが両脇に手を入れて持ち上げようとする。
今度は持ち上がらない。あるいは格段に持ち上げにくくなる」

「え~っ、背中を叩いてほぐしただけなのに、なぜ立つ力まで強くなるの?」
「背中が柔らかくなって伸びた分、腰が後ろに引っ張られなくなったから。
当然、股関節も普段より前にある。
前屈が深く出来るようになったと言うことは、それだけ股関節に乗り込んでいると言うことでもある。
つまり股関節の捉えが良くなって、重心も下がったということ」
「納得。
でも、パートナーが居る時はいいけど、一人でやる時はど~すればいいの?」
「一つにはイメージング。パートナーが叩いてくれていると仮想して前屈する。
自分の手の届く範囲で、背中を叩きながら前屈するのも可。
あるいは背骨ローリングで背中をほぐす。
仰向けに寝て両手で膝裏を抱え、後方にでんぐり返りする。

脚が伸びきって床についた姿勢は、ヨガの『鋤(すき)のポーズ』と似ている。

脚を戻していく反動を使って、体操座りになる。

また後方に向かって倒れる動作を繰り返す」
「確かに床に指圧されて、背中が緩んでいくよね」
「教室では3回くらいしかやらないけど、自宅でやるときは何回やってもいい。
目が回るのは普段から重心が上がっている証拠」
「目をつぶってやってもいいよね。
だんだん位置がずれたとしたら、背骨が歪んでいるせい」
「そのとおり。
以前、チンパンも100回やったら、お尻の皮が向けた(笑)。
まだまだ余分な力が入っていると言うこと。
話を戻すと、基本=前屈と背骨ローリングだけで、結構股関節で捉えた状態が創れると言うこと」
「それだけ基本は大事ってことでもあるよね」
「股関節の捉えが出来た状態だと、足腰や膝に負担がかからず、長時間楽に立ち続けられる。
立禅も股関節を正しい位置に修正してからやると、重力との調和をつかみやすい。つまり上達が早い。
正しい重心でゆったりと立てるようになれば、心も穏やかになる。仏像はみんな姿勢がいい。
立禅や立ち方を稽古で得られる最大のメリットは、『心の平安』かも知れない」
「なるほど~。人が求めるのは、心の安定だもんね。
これで立ち方の問題は全て解決?」
「ところが人間は樹木のように静止して生きているのではなく、歩き回って生活している。
静止の状態なら正しい重心・姿勢で立てるようになっても、動いた瞬間に壊れてしまう。
先ほどの背中を叩いて前屈する組手で、股関節の位置を修正すると、確かに持ち上げにくくなる。
しかし、いつもの調子で歩き回って貰ってから、パートナーに持ち上げてもらうと、今度はあっさり持ち上げられてしまう」
「動くことで、股関節の位置がずれて、感覚が消えたからだね。
偽りのお化粧のようなもの?」
「テクニックだけで一瞬でつくった状態は、崩れるのも一瞬ということ。
ただし稽古がお化粧と違う点は、瞬間の変化を羅針盤として、脳の回路を変えて行く点。
回路を定着させるために、立禅や屈伸を長時間繰り返す。
実際に屈伸をやり込んでいる時は、歩くのも足が軽くて楽。
そして、並行して『正しい歩き方』を稽古して行くのが肝心」
「武道とか能などの古典芸能でも、『歩く姿を技にしなさい』って教えるみたいだもんね」
「静止した状態でだけ、<股関節の捉え>が出来ても、スポーツや仕事などの専門的な動きの中で役立てるには限界があると言うこと。
古典的なメソッドの中には、この解決法があるらしい。
たとえば中国拳法には、這(はい)という稽古法がある。
腰を落とした状態で、ゆっくりと左右に蛇行しながら歩く。
5メートルの距離を20分かけて動くほど、スローな動き」
「まるで立禅のまま動いているみたいだね」
「そういうこと。先生によっては、立禅よりも這を重視している人も居るほど。
実際の戦いでどれほど激しく動いても、這をやり込んでいれば、形状記憶合金のように、立禅の腰を落とした状態=股関節で捉えた状態 に戻れると言う。
昔の中国の達人は、田んぼの泥の中に足首までつかって這をやった人もいたらしい。
ただ強靭なだけでなく、左右に自在に動き回れる、しなやかで粘っこい足さばきを得るため。
動くということは、不安定になるのが普通。
その『不安定さの中で安定する』という矛盾を実現するためのひとつの回答が、這のユックリズムかも知れない」
「太極拳がスローに動くのも、そのためかもね?
ヨガにも、すごくゆっくり歩きながらやる瞑想法があるみたいだし」
「歩き方はとても高度で難しい話なので、チンパンもこれ以上よく分かりません。
最後に一つだけ言うと、立つのがきつい人は、腎臓が弱い可能性もある」
「腎は立つ力を司る臓器だもんね。
相談者さんが、腎が弱いんなら、養生する必要があるよね。
ワイパー体操みたいな、捻じる体操をいっぱいやるとか、半身浴で温めるとか、黒い食べ物を多めに摂るとか・・・・」
「腎は水の循環も統括している。
だから腎が弱い人が水商売をやると、立ち仕事と水っ氣のダブルパンチのダメージを受ける。
仕事を変えるのも手」
「職業選択も、自分の体質を参考にする必要があるよね。
相談者さんは接客好きだそうだけど、座ってやる接客業だってあるわけだし」
(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。

この写真は何をしているボクでしょう?
①二本足で立つ稽古をしている。
②骨盤と肋骨を引き離す組手をやっている。
③悪さをしたのでお仕置きされている=宙吊りの刑。
考えている間にコメントさせていただきますと、人間は直立歩行のため、重力の影響で色んな病氣を抱えることになりました。『正しく立つ』研究は、健康法に必須ですね。
ところで、みなさんのご明察のとおり、正解は③です。助けて~っ!
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